渡独が決まったらまずはアパートを見つけたいところ。ですが、大都市は慢性的に空き物件がなく、中都市アーヘンでさえ物件探しは激戦です。アパート探しの流れは日本と同じですが「進み方・対応の仕方・契約までの日数」は日本人の想像を超えます。入居してからもすぐに生活がスタートできるわけではなく、電動ドリルで電気やカーテンを設置したりとやることが満載です。右も左も前も後ろも全てことなるドイツのアパート探しですが、事前に重要ポイントを押さえてすすめるだけでも時間もストレスも短くなります。
物件の探し方
不動産検索サイトImmoScout24を利用します。掲載物件は、不動産会社が扱うものと家主さんが直接出しているものがあり、ほとんどが家具無し物件です。ドイツに住みたい人々が世界中からアクセスしているため、非常に競争率が高いです。
気に入った物件があれば、ImmoScout24からメッセージを送信できます。定型文はなく、ご自身で文面を考えます。興味があるので内見したい、と簡単な文章で大丈夫です。
物件情報を確認するときのポイント
ポイントは、キッチン、浴槽、エレベーターが付いているかです。
日本ではどこの物件にもキッチンが付いていますが、ドイツではキッチン付きアパートは希少です。検索条件に、キッチン有り、と追加すると検索結果がガクンと減り、キッチン無し物件の1/10程度になります。
浴槽やエレベーターの有無は、小さなお子様連れの場合はしっかりチェックしたほうがいいです。
詐欺には気を付けて!
内見依頼を出した際、返信がすぐに来たり、ドイツ語で出したのに英語で返信、そんなときは要注意です。前家賃や保証金の振込詐欺の可能性があります。詐欺物件は掲載情報に違和感があります。例えば、人気地区で家具付きアパート650€/80㎡、室内もリフォーム済みで超オシャレ、、、激戦のドイツでこんなステキな物件、十分怪しいのですが、なかなか物件が見つからないと判断力が鈍ります。好条件の場合は、掲載情報と返信内容を再度確認してください。
内見時の重要ポイント
キッチンや浴槽、エレベーターの有無、洗濯機置き場などを確認するといいです。
キッチンはある?
キッチン無しアパートの場合、キッチンを購入するか前住人から引き継ぐことになります。内見時に現住人がいればその場で交渉し、不動産会社仲介の場合は交渉をお願いすると良いです。キッチン有りの場合、食器を洗う習慣がないドイツではシンクがとても小さいので、食洗器が付いているかを確認するといいです。
エレベーターはある?
築浅の物件にはエレベーターが付いていますが、古いアパートにはありません。エレベーター無しアパートの上階の場合、想像以上に生活が大変です。
エレベーターがないと困るシーン
- 家までベビーカーを運ぶとき
- 洗濯物を地下の洗濯室に持って行くとき
- 重い荷物を家に持ち込むとき
- 自転車を玄関前に置くとき
周辺環境は?
また、家の中だけでなく周辺環境のチェックも忘れずに。家族連れの場合は徒歩圏内にスーパーがあればいいですし、車を使わない場合はバス停までの距離も大切です。街中でしたらゴミのポイ捨てや騒音も確認した方がいいです。
家主さんは良い人?
家主さんの人柄を見ることは大切です。アパートを借りた後にトラブルは必ずありますので、家主さんか不動産会社に頼ることになります。内見時に少しお話できるといいですね。
契約書の注意点
契約書はドイツ語で書かれていますので、必要な箇所を見落としてしまう可能性があります。家賃、解約、損害の責任範囲などの重要事項については、翻訳してしっかり把握しておくことが大切です。
ドイツは全て契約書で決まります。非常に契約書は大切なので、流し読みをしないでしっかりと全部読み理解するといいです。
入居時の注意事項
入居日は、家主さんまたは不動産会社とアパートをチェックし、入居確認書にサインをします。サインした時点で全て受け入れたことになるのでサインは慎重に!
壊れているものは家主さんに報告し修繕してもらいましょう。直してくれるかは分かりませんが、、、
入居日に確認すべきこと
- 水道やガスメーターの使用開始時の記録
- キッチン扉の開閉確認
- 部屋のカビチェック
- 窓の鍵・開閉チェック
- 鍵の本数の記録
物件探しで日本と異なる点
日本のように、ネットで検索して内見依頼のメールを送ればすぐに日程が調整できたり、不動産会社に行けば席に案内されて、お茶を飲みながらいくつか物件を提案してもらえる、といったことはドイツではありません。
どこの地域も慢性的に空き物件がない
10年前と比べて、現在(2024年)は驚くほど物件探しは厳しくなっています。もともとドイツ全体で物件不足だったところに、コロナや戦争、物価上昇といった影響で家賃が高騰し、引っ越す人も減っている一方で、海外からの入国者は多く、どこの都市でも物件がない状況が続いています。
内見依頼に返信はほぼ来ない
日本人だけでなく、不動産会社経由、家主さん直物件どちらも内見依頼メールにはほとんど返信がありません。英語で送った場合はなおさら来ません。返信があっても、だいたい2〜4週間後くらいで、忘れた頃にやっと来ます。
内見獲得までに要する時間
内見依頼を出しても、断りのメールか返信なしかなので、内見予約を獲得するまでにはかなりの時間を要します。1件獲得するのに半年かかる人もいるので、途中かなり凹むと思いますが、めげずに出し続けてください。日本からご自身でやる場合、ひたすらメールを出す以外、内見予約を獲得できる方法はありません。
不動産会社の対応
日本とは違い、「お客様ファースト」ではないので、ホスピタリティはなく、こちらからアクションを起こす必要があります。たとえば、「返信待っててね」と言われてそのまま待っていると、返信は来ず、、、確認の連絡をしても「待っててと言ったでしょ!」と怒られたり、、、理不尽ですが、これが普通なので、めげずに連絡してください。
また、ネット以外では内見予約を受け付けていないことが多いので、その場合、不動産会社に直接行っても追い帰されます。
不動産会社と家主直接契約の2パターン
日本は不動産会社を通して物件を借りる人がほとんどですが、ドイツでは個人で直接貸すことも可能です。個人:不動産会社=6:4です。
KaltmieteとWarmmiete
家賃は、Kaltmiete(部屋だけの値段)とWarmmiete(部屋と共益費、光熱費を含んだ値段)があります。物件情報のところにどちらも必ず書いてあるので確認してください。特に、Warmmieteの中に暖房費やインターネットなど何が含まれているのかが大切なので見落とさないようにしましょう。
Kaltmieteだけ見るととてもお手頃な値段に見えるのですが、実際にはWarmmieteを払うので、一気に値段があがります。お気を付け下さい。
不動産会社の仲介手数料はない
数年前に法律が改正され、不動産会社に仲介手数料を支払う必要はなくなりました。でも、どこかで費用が上乗せされているのは事実なのですが、、、もし、不動産会社から「仲介手数料はいくらです」と言われた場合、きっぱりと「払う必要はありません」と伝えてください。日本人は違和感があってもつい我慢してしまいがちですが、ドイツに住むのであればしっかり主張することが重要です。
弊社のような仲介業者はサポート料金が発生しますので、混合しないようにお気を付け下さい。
成功させる重要ポイント
では、どうしたら無事に物件を見つけられるのでしょうか?その鍵となるのは、「内見なしで即契約する覚悟」と「貸主に安心感を与える準備」です。どちらも内見依頼に返信が来ることが前提ですが、ここが最も重要で、以下の2点に注意しながら進めることが成功への秘訣です。
内見無しで即契約の覚悟を持つ
内見して部屋を決めることは日本では一般的ですが、ドイツではそのペースでは物件を押さえることが難しいことがあります。内見日を決めて、実際に内見に行くと、30分後には「他のお客様が契約しました」と言われることも珍しくありません。物件詳細や写真で問題がなさそうなら、即契約を決める覚悟が必要です。ただし、詐欺も横行しているため、十分に注意を払いながら契約を進めてください。
貸主に安心感を与える材料を準備する
複数の内見希望者がいる場合、最初に内見したからと言って必ず契約できるわけではありません。大切なのは、「この人なら安心して貸せる」と貸主に思ってもらうことです。特に、家賃を支払えることを証明するための書類は重要です。
家賃を支払える証明書
企業からの研究留学生の場合はあまり心配いりませんが、企業からではない研究留学生や学部生にとっては非常に重要です。研究留学のために一旦職を退く場合は無職になるので、いくら日本で信頼のある職業に就いていたとしても、ドイツでは考慮されません。しっかりと家賃を支払える能力を証明する必要があります。
家賃の2~3倍の金額と滞在期間が記載された証明書を用意してください。ただし、証明書の種類によって準備にかかる時間は異なります。最短でも3日、最長で1ヵ月ほどかかることがあるので、焦らず余裕をもって準備しておくことをお勧めします。
身分証明書の提示
研究留学生の場合、「Invitation letter」を提出すると信頼を得やすいです。学部生の場合は、入学許可証を提出するといいです。
騒音や破損の懸念がないことの証明
お子様連れの方は特に注意が必要です。お子様一人なら問題ないことが多いですが、二人以上になるとハードルが高くなることがあります。騒音や破損のリスクがないことをアピールし、貸主に安心感を与えるようにしてください。
アパート探しの最も激戦時期
学生にとって、8月から10月にかけての物件探しは超激戦です。日本で物件が見つからず、渡独してから探そうとする学生さんもいますが、結局見つからずにホテル暮らしを続ける人もいます。必ず、8月前半までに物件を確保しておくといいです。
企業や医師、大学関係者の研究留学の場合は、研究開始時期がそれぞれ異なるため、時期は関係ありません。その代わり、家族向けの物件、特に80㎡前後の手頃な価格帯の物件に人気が集中するため、その広さや価格帯で探すのは非常に難しいです。また、家族の人数によっても条件が変わるため、家族向けの物件探しは一年を通して大変です。
家具付きと家具無しどちらがいい?
家具付きアパートは不動産会社取り扱いが多いので比較的楽に探せます。また、水道やガスなどが含まれているので入居・退去が煩わしくありません。一方で、広さや場所を考えた場合、家具無しと比べるとかなり割高です。
家具無しアパートは個人と不動産会社が取り扱う両方があります。お手頃な家賃で、広さ・立地共に満足する物件が多いですが、非常に内見依頼が殺到するので激戦です。
プロに頼む?自分で探す?
とにかくドイツの物件探しはトラブルが多いです。入居した後も必ずトラブルは発生します。そのトラブル対応が大変なので、できる限り事前に回避できるプロがおすすめです。ただ、現地にいないと意味がないので日本からのみサポートする企業は避けたほうがいいです。
社会人の方、特に家族連れの方は、物件探しの時間と労力を考慮すると、迷わずプロに依頼することをおすすめします。
学生の方は比較的時間に余裕があることが多いので、自分で数ヶ月頑張るといいと思います。ただし、渡独前1ヶ月でも決まらない場合は、すぐに依頼した方がいいです。「渡独してから決めよう」と思っても、渡独後すぐに物件が決まることはないです。
入居が決まったら
日本人には考えられないのですが、入居日からすぐに生活は開始できません。なぜなら、どの部屋も電気の配線がブラーンとぶら下がっているだけで、電気を買ってきても付きません。カーテンはレールから付ける必要があります。キッチンもないです。と、ドイツのアパートは「空っぽの箱」なのでまずは生活ができるように整える必要があります。だいたい1ヵ月をみておくといいです。詳しくはこちらをお読みください。ドイツのアパートに住むために知っておきたいポイント
まとめ
ドイツのアパート探しは非常に大変で、時間と労力、根気のいる作業になります。中には家族総出で探している人もいます。内見依頼の返信はほぼ来ない、家主さんに信頼してもらうための安心材料、など日本との違いをしっかりと抑えておくといいです。また、契約書や入居チェックも入念に行い、トラブルに合わないようにしましょう。
文:レンガ
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