ドイツの賃貸物件は、ほとんどが「家具無し物件」です。その家具無し物件、名前のとおり本当に「何もない」のです!日本では、照明をつけるための器具やカーテンレールはすでに備わっていますが、ドイツではありません。「カーテンはどこにかけるの?」「照明はどう取り付けるの?」「え、キッチンがない!?」と戸惑うことばかりです。そんな日本人には想定外の家具無し物件、何が備わっていないのか、どうすべきかをお伝えします。
ゼロからの生活スタートアップ術
ドイツのアパート(家具無し)はまさに「空っぽの箱」です。キッチンやバスルームの場所はあるけれど、そこにあるのは「空間」だけ。設備から家具まですべて自分で揃える必要があります。部屋を住める空間に仕上げるまでには、電動工具の購入、計測、家具の調達、そして設置、とかなりの時間と労力が必要です。問題なく生活ができるまでには、少なくとも1ヵ月はかかります。
アパートに備え付けられていないもの |
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電気のシーリング |
カーテンレール |
キッチン |
収納 |
洗面所 |
靴箱 |
入居直ぐに購入すべきもの |
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電動工具 |
照明ひとつでこんなにも大変!
日本では、照明器具を買って「カチッ」と取り付ければ、すぐにパッと明かりがつきますよね。でも、ドイツのアパートには、天井にシーリング(取付口)が備わっておらず、代わりに配線が天井からぶらりと下がっているだけなのです。電気の配線など、日本では理科の実験以外で触れる機会がない方がほとんで、戸惑うこと間違いなしです。全部屋ご自身で設置する場合は3日ぐらい、業者に頼むと半日です。
照明をどこに取り付けるか決めたら、電気と天井(または壁)の間に板を挟んだ方がいい場合、長さや厚さをしっかり計測です。微妙にずれると見栄えがいまいちなんです。電気、板、そして電動ドリルを準備して、いざ天井に穴開け。照明器具を取り付ける際、緑と赤の配線を間違えないようにお気を付けください。
硬い天井の場合、電動ドリルが入りにくく刃が折れてしまうことがありますので、ゆっくり進めてください。また、天井から粉状の破片が落ちてくるので、少々大変ですが、掃除機で吸いながら作業すると部屋が汚れません。
キッチンなし!
ドイツでは、8割以上の賃貸物件にキッチンが備え付けられていません。内見で「こちらがキッチンです」と案内されても、そこにあるのは何もない空間だけです。
キッチンを手に入れる3つの方法 | ポイント | おすすめ度 |
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現住人から引き継ぐ | 譲渡価格を交渉してお得に引き継ぎ | 1 |
家主さんにキッチンを付けてもらう | キッチン代を家賃に含めてもらう | 2 |
IKEAやホームセンターなどで購入する | IKEAやホームセンターで購入 | 3 |
最も手軽なのは、現住人から引き継ぐことです。交渉は面倒ですが、すでに設置されたキッチンをそのまま使えるので、労力も少なくトラブルも回避しやすいです。
次におすすめなのは、家主さんにキッチン設置してもらうことです。家主さんが付けてくれれば、設置の労力はもちろん、故障したときは家主さんが修理してくれるので、面倒がありません。ただ、キッチン代をどうするかは交渉する必要があります。
最後は、自分でキッチンを購入することです。キッチンの幅を測って、IKEAやホームセンターで購入し、設置する。この一連の流れ、一見簡単そうですが実際にはかなりの時間と労力がかかります。また、退去時には処分や次の住人への譲渡も考えなくてはいけません。さらに、費用も2500~5000ユーロほどかかるため、あまりおすすめはできませんが、長期滞在なら好きなキッチンを設置できるのでいいですね。
カーテンもDIY?!
日本では、窓の寸法を測ってカーテンを購入すればすぐに取り付けられますが、ドイツではカーテンレールなんてどこにも見当たりません。
窓枠の寸法を測り、カーテンレールを取り付けるための板を購入します。電動ドリルを使って窓枠周辺の壁に穴を開け、板を取り付け、そこにカーテンレールを設置します。電気同様、一見簡単そうに聞こえますがかなり時間と労力がかかります。
前の住人から引き継ぐことが一番いいのですが、カーテンはあまり引き継いだ人を見たこととがありません。
ちなみに、ドイツでは多くの人がレースカーテンを使わないため、厚手のカーテンだけで生活していることが多いです。夜、明かりをつけると部屋の中が丸見えなのですが、ほとんど家が同じなので気になりません。
お風呂なし物件
シャワーのみで浴槽がないアパートは多いのですが、まれに浴室そのものがないアパートがあります。「浴室がない?!」と驚くのですが、IKEAやホームセンターで購入し、業者に設置してもらいます。決してご自身で挑戦はしない方がいいです。設置してもらうにしても、非常に時間と手間がかかるので、どんなに魅力的な物件でも、浴室があるアパートを選ぶといいです。
ゼロから作る洗面所
洗面所は、浴室に併設されていますが、水道の位置があるだけで、洗面台や収納はありません。そのため、ご自身で用意する必要があります。電気やカーテン同様、サイズを計測し、IKEAやホームセンターで購入し、ご自身で設置するか、業者に設置してもらいます。
生活する上で洗面所はかなり重要度の高い空間だと思いますので、すぐに利用できるように準備を進めておくといいです。
トイレはあるよね?
トイレは設置されていますが、ペーパーホルダーや手洗い場所、棚はありません。そのため、必要なものは自分で取り付ける必要があります。日本人には理解が難しいですが、たまに、便座がない場合があります、、、IKEAやホームセンターで購入しましょう。
靴・鍵の置き場所はどこ?
日本では、どの賃貸物件でも当たり前のように靴箱が備わっていますが、ドイツではもちろんありません。靴箱がないと、玄関に靴が直置きになり、家の中に砂や泥が入り汚れてしまいます、、、また、重要度は低いかもしれませんが、鍵置きもないので、こちらは壁に取り付けると便利です。
収納ゼロの衝撃!
ドイツのアパートには、クローゼットや靴箱、傘立て、コート掛け、バスルームの棚など、いわゆる収納スペースは一切ありません。また、倉庫がある物件が多いのですが、もちろん倉庫にも収納はなく、自分で揃える必要があります。地震がないので高さのある収納でも問題ありません。退去時には処分が必要になりますので、処分しやすいタイプのものがおすすめです。
ホームセンターで揃えよう
電動ドリルや工具、カーテンレールなどは、ホームセンター「BAUHAUS AACHEN」で手に入れることができます。電動ドリルは、DIYや家具の取り付けなどで頻繁に使うことになるので、まさに必需品です。
ドイツの賃貸物件の特徴
ではここからは、アパートの特徴について説明します。ドイツの賃貸物件は、壁に穴を開けてもオッケー、洗濯機は地下、湯船はなし、と日本とはかなり異なります。住み始めてから驚くことがたくさんありますが、事前に知っておくとよりスムーズに新生活がスタートできます。
賃貸でも壁に穴を開けてもOK!
日本では賃貸物件に穴を開けるなんて考えられませんよね。絵を飾ったり、照明を取り付けたり、家具を固定したり、全て穴をあけるのでダメですが、ドイツでは問題ありません。退去時にその穴を埋めて、壁を元の色に戻せばOKなのです。ただし、道具やペンキを自分で準備して修繕しなければならないので、退去時は少し手間がかかります。
自分で修繕する場合は、「まぁキレイになったな」くらいで終わりにし、残りは保証金から差し引いてもらうことがいいです。どれだけ丁寧に修繕しても、プロの仕上がりにはかなわないので、最初から保証金で修繕してもらうのも有りですね。
洗濯機はどこ?
ドイツのアパートでは、洗濯機と乾燥機がセットで地下に設置されていることが多いです。洗濯物は大きめの袋や洗濯籠に入れて地下へ持って行き、洗濯終了後、乾燥機があればそのままポン、ない場合は地下に併設されている物干し竿に干すか、部屋に持ち帰って干します。この作業、実は結構重労働なんです。ドイツのマンションはエレベーターがない場合が多いので、エレベーターなし、かつ5,6階層に住む方にとっては、非常に持ち運びが大変なんです。できる限り、洗濯後は地下にそのまま干すといいです。
玄関は砂だらけ!
ドイツの玄関は、日本のような段差はなく、靴を脱いでも泥や砂がそのまま家の中に入ってしまため、頻繁にホウキで掃く必要があります。また、玄関と家の中の境界がはっきりしていないので、家庭ごとに靴を脱ぐ場所が異なります。玄関扉の外に靴置きを設けてそこで脱ぐ人もいれば、家の中の玄関近くに靴箱を置く人もいます。また、玄関周りが狭い場合には、廊下に靴を並べていることもあります。
玄関の境界をはっきりさせたい場合は、ドアの前に足ふきマットを置くのがおすすめです。ここまでが玄関で靴を履いてもいい場所、ここからが家の中で靴を脱ぐ場所と、誰が来てもわかりやすくなります。特に子供には見た目で分かるので良いですね。
余談ですが、ドイツ人を家に招待すると、なぜか玄関扉の外で靴を脱ぐ人が多いです。なぜそこで脱ぐ、、、と言いたいですが、おそらく日本人はキレイ好きだから汚してはいけない、との発想からだと思います。玄関で脱いでほしいですね。
バギーはどこに置く?
小さいお子さんがいる場合、バギーは必須です。でも、どこに置いていいのかわからない物件が多いのも確かです。エレベーターがあれば玄関前や家の中でも問題ないのですが、無い場合は悲惨です。バギーを担いで階段を上り下りする必要があり、かなりの重労働、かつ子供が寝てしまったときはそのまま担ぐ必要があるため腰がやられます。アパートによっては、エントランスにバギーを畳んで邪魔にならないように置ける場合があるので確認するといいです。ルールを守らないと家主さんやご近所さんに怒られます。
湯舟にはつかれない?!
浴槽がある家は意外と少ないのですが、浴槽があっても、日本のように浴槽と洗い場が分かれてはいません。浴槽の上にシャワーが取り付けられているので、浴槽の中で体を洗います。日本人のように、ゆっくりと湯舟に浸かるのではなく、子供たちが水遊びを楽しむ場になっています。浸かる場合は、まず体を浴槽の中で洗ってからお湯を溜めるか、湯舟に浸かってから体を洗うことになるので、少々手間がかかりますね。
最近は、小さなシャワー室と、離れた位置に浴槽があることが多いです。シャワー室で体を洗った後、濡れたまま浴槽に移動するので床はビショビショになりますが、、、慣れてしまえば問題ありません。
余談ですが、ドイツでは、毎日お風呂に入る習慣はありません。近年の猛暑の影響で、夏場は毎日入る人も増えていますが、冬はそれほど入りません。
安心の住人専用の中庭
多くのマンションには住人専用の中庭があります。ドイツのアパートは、隣接する建物の間に隙間がないため、中庭は外部からの侵入が難しく、子どもを遊ばせるにはとても安全な場所です。安心して子どもを遊ばせながら、ちょっと一息つくことができます。また、中庭ではお誕生日会やバーベキューを開くことができるので、ぜひ活用してみてください。
賃貸物件なのにペットOK!
ほとんどの賃貸物件(家具付き・家具無し両方)はペットOKです。特に小型犬の場合「犬がいる場合は契約できません」と記載されていても、家主さんと交渉すればOKになることが多いです。
ただし、ドイツでは、休日は家でゆっくり過ごし、庭で食事を楽しんだり、窓を開けて本を読んだりすることが一般的です。そのため、マンション内で犬が頻繁に吠えると苦情が来ることもあるので、周囲への配慮も忘れずにしてください。
Ruhezeit(ルーエツァイト)
ドイツの生活情報でもふれていますが、ドイツには、Ruhezeit(ルーエツァイト)と呼ばれる「静かに過ごさなければいけない時間」があります。これは、マンションやアパート毎に決められているルールで、マンションの契約書や規約に必ず書かれています。
Ruhezeit(ルーエツァイト)は、平日の夜22時から翌朝6時または7時、昼の13時から15時、そして日曜日や祝日の終日に適用されます。この時間には、洗濯機や掃除機を使用してはいけないなどです。
Ruhezeitの詳細については、ラジオ関西トピックスラジトピでの取材記事をご覧ください。
安息時間以外にもドイツにはいろいろなルールや習慣があります。ドイツの生活スタイルについて知りたい方はこちらをお読みください。
冬でも暖かいドイツのアパート
賃貸に限らず、ドイツの住宅は気密性がとても高く、家の中を暖かく保つように設計されています。そのため、外が寒くても家の中は快適に過ごせます。ただ、通気口が少なく、空気がこもりやすいので、湿気がたまります。放置しておくとカビが生えるので、真冬でも一日に何度か窓を開けて換気する必要があります。実際、家だけでなく、大学や企業でも、冬の寒い日でも、ドイツ人は頻繁に窓を開けます。寒い、、、
激戦極めるドイツの物件探し
ここまでダダダっと書いてきましたが、そもそも物件はどうやって見つけるの?と疑問に思う人もいたかと思います。ドイツでは想像以上に物件探しが大変なのです。正直なことを言うと、物件探しにかかる時間と労力を考えたら少々高くてもプロに頼むほうがいいです。それでもやってみたいというかたはぜひこちらを参考にトライしてみてください。
まとめ
ドイツの家具無し物件は、日本の賃貸物件とは異なり、家具や家電が一切ないだけでなく、計測から設置までを自身で行う必要があり、非常に手間暇のかかる作業です。特に、キッチンがない場合は非常に煩雑です。生活を始めるための準備期間と費用を事前に把握し、準備することで、快適な生活を送るための第一歩を踏み出せます。
文:レンガ
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