ヨーロッパ最大の経済大国、ドイツ。政治や文化の面でも大きな影響力を持つこの国には、素敵なイメージを抱く方も多いのではないでしょうか?しかし、日本人がドイツで生活するとなると、意外に大変なことも少なくありません。たとえば、「静かにしなければいけない時間」や「日曜日は労働禁止」といった興味深いルールがあるのです。また、環境保護への意識が非常に高く、ペットボトルのリサイクルを促すデポジット制度や、高速道路での速度無制限といった独自の仕組みも特徴的です。そんなドイツで快適に暮らすために、知っておきたいポイントをわかりやすくご紹介します。
生活スタイル
ドイツの朝はとにかく早いです。幼稚園は7時半から、学校は8時、企業も8時前には始まり、パパが通勤途中に送迎することもよくあります。パン屋さんやスーパーも早朝から開いているので、通勤・通学の合間に立ち寄れたり、子供達を送ったあとにママが買い物を済ませて帰ることもでき、朝の忙しい時間を有効に使えます。どこの企業もだいたい17時には終わり、残業は少なく、ワークライフバランスがしっかり保たれています。
一方で、休日の朝はのんびりしています。9〜10時頃に家族みんなで遅めの朝食をとりながら、ゆったりした時間を楽しみます。また、日曜日は「安息日(健康のために心身を休める時間)」で、「閉店法」という営業禁止の法律もあるので、どこのお店も閉まっており、街はシーンとしています。多くのドイツ人は、公園に行ったり、散歩したり、家に友人を招待してバーベキューをしたりと、リラックスした時間を過ごします。
特に、夏は涼しく日が長いため、家族でのんびりとした時間を楽しめます。冬は寒さが厳しいものの、クリスマスマーケットやカーニバルなどドイツならではのイベントがあり、温かい雰囲気に包まれます。
食事
ドイツでは朝食と夕食には「Kaltessen」と呼ばれる冷たい料理(調理しないもの)が並びます。例えば、豊富な種類のパン、キュウリや人参スティック、トマト、オリーブ、ハムやサラミ、ゴーダやモッツァレラチーズ、季節のフルーツなど、ホテルの朝食のようです。昼食は「Warmessen」と呼ばれる温かい料理(調理するもの)で、スパゲッティやピザ、ハンバーグ、シュニッツェル(とんかつ)などです。ピザは子供も大人も大好きで、自宅でも作ります。金曜日はドイツ全土で「お魚の日」とされ、学校や企業のランチメニューには魚料理が多く提供されます。飲み物は炭酸水、お水、牛乳、紅茶などです。
日本人のように1日3食作る習慣がないため、生ごみはほとんど出ません。その代わりに、ゴミ置き場でピザの箱が山積みになっているのをよく見かけます。
お肉・お魚
ドイツのお肉は赤身が主流で、霜降り肉はありませんし、薄切り肉もありません。鶏肉はムネ肉とモモ肉が売られていますが、モモ肉は骨付きで販売され、自分で骨を取る必要があります。魚に関しては、オランダに近いアーヘンや海沿いの地域では美味しい魚が手に入りますが、全体的にはあまり期待できません。とはいえ、サーモンやマグロはよく食べられていて、市場で見かける魚屋さんでは、魚のサンドウィッチも楽しめます。
バーベキュー
バーベキューが盛んで、自宅のパーティだけでなく、地域やマンション、学校や幼稚園のイベントとしても行われます。バーベキューに招待された際には、日本の一品(唐揚げや枝豆など)を持参すると喜ばれます。家庭でバーベキューをする際は、Ruhezeit(ルーエツァイト)に注意してください。
水道水・飲料水
ドイツの水は硬水です。水道水も飲めますが(地域差があります)、日本人には苦手な味かもしれません。浄水フィルター「BRITA」がスーパーで手軽に購入できるのでおすすめです。水道水を注ぐだけで、売っている水と同じ美味しい水になります。
スーパーでは、ほとんどの水は6本パックで販売されています。1本だけ購入したい場合は、そのパックから1本取ります。6本パックの封を開けても問題ありません。
ドイツでは普通の水よりも炭酸水の方が人気です。「普通の水が飲みたい」と思って購入したものが炭酸水だった、ということはよくあるのでお気を付け下さい。
ドイツ語 | |
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炭酸無し | still / ohne Kohlensäure |
炭酸入り | Sprudel / mit Kohlensäure / Klassisch |
微炭酸入り | Medium |
ペットボトル・瓶のデポジット制度
スーパー・ドラッグストアで販売されている飲料のほとんどに「Pfand(デポジット)」が付いています。商品の価格にデポジット料が含まれており、瓶や缶を回収することで、そのデポジットが返金されます。空のペットボトルをスーパーの専用回収機に入れると、少額のクーポンが発行され、スーパーでの買い物に使用できます。お金も返金されて、環境保護にも貢献できる、とても良い制度です。ペットボトル・瓶は捨てずに回収しましょう。
瓶・ボトルのリサイクルの仕方についてはこちらをお読みください。
お米
ドイツ人もお米は食べますがタイ米です。お寿司やおにぎりを作りたい場合は、大きなスーパーで「寿司ライス」が売っているのでおすすめです。味や食感は少し違いますが、日本米の代わりになります。ただし、炊いたらすぐに食べないと固く黄色くなるので、できるだけ炊きたてで食べるといいです。もし日本米が欲しい場合は、デュッセルドルフのアジアンショップで、日本産やイタリア産の日本米が手に入ります。
静かにしなければいけない時間
ドイツには、安息時間:Ruhezeit(ルーエツァイト)と呼ばれる「静かに過ごさなければいけない時間」があります。特にマンションやアパートに住む人々にとって、このルールは重要です。マンションの規定によって定められていることが多く、これを守らないと賃貸契約の解除や警察からの注意、さらには罰金が科されることもあります。
Ruhezeit(ルーエツァイト)は、平日の夜22時から翌朝6時または7時、昼の13時から15時、そして日曜日や祝日の終日に適用されます。この時間には、洗濯機や掃除機を使用してはいけないほか、犬の鳴き声も控える必要があります(とても難しいですが)。州によってルールや時間帯が異なるため、具体的な規定はマンションの管理規約を確認するといいです。
Ruhezeitについては、ラジオ関西トピックスラジトピでの弊社記事をご覧ください。
閉店法(日曜日・祝日の全店休業)
ドイツでは、日曜日および祝日にすべての店舗が休業する「閉店法」という法律があります。この法律により、企業はもちろん、スーパーやドラッグストア、全ての店舗が日曜・祝日は休業のため、街は閑散としています。ちょっとした買い忘れがある場合、渡独当初は不便に感じることもありますが、慣れてしまえば問題ありません。また、アーヘンのようにオランダに近い地域では、オランダは日曜日も営業しているため、買い物には困りません。
日曜・祝日でも営業している店舗
- 中央駅併設のドラッグストア、パン屋など(短時間の場合あり)
- レストラン
- KIOSK
洗濯機の利用時間と干す場所
ドイツでは、Ruhezeit(ルーエツァイト)に基づいて、各アパートや地域で洗濯機の利用禁止時間があります。例えば、「日曜日は終日利用禁止」「夜20時以降は使用不可」といったルールです。契約書や利用規約に書かれているので確認してください。
洗濯機と乾燥機は、家の中に置けることもありますが、だいたいは地下に置きます。また、洗濯物は外に干さず、室内や共同の洗濯室に設置された物干し竿を使用するか、乾燥機を利用します。ただし、景観を損なわなければ、ベランダなどに干してもいいアパートもあります。アパートの特徴と整え方についてはこちらをお読みください。
エアコン
スーパーや公共交通機関、大学、企業などにエアコンはありますが、一般家庭にはありません。ドイツの家は、断熱性能が優れており、外気温の変化を受けにくいため、夏でも比較的涼しく、エアコンがなくても快適に過ごせます。
近年は30度を超える日も増えてきました。昼間は窓を開けても暑さがこもりがちなので、扇風機があると便利です。夜は窓から涼しい風が入りますが、虫が気になる方は扇風機が安心です。真夏は扇風機が売り切れてしまうので、早めの購入がおすすめです!
子供とワンコ
ドイツは子育て世代には非常に優しい国です。公共交通機関では、幼い子供が騒いでも周囲の人が優しくあやしてくれたり、駅やバスでバギーの上げ下ろしを手伝ってくれることが多く、親にとっては心強いですね。また、マンションやアパートでは赤ちゃんの泣き声に対して苦情がないので、安心して育児ができます。
犬にとってもフレンドリーな環境で、レストランやカフェでは犬用の水が提供され、デパートや家具店にも連れて入れます。残念ながらスーパーやドラッグストアには入れませんが、入り口にリードをつなげるスペースがあります。
配達
不在時は近隣住民が荷物を預かることが多く、不在票が入っていたりなかったり、、、不在票がない場合は近所の人が届けてくれます。スーパーには置き配ロッカーがあり、そこで受け取ることもできますし、近くの郵便局を指定して受け取ることも可能です。
日本から荷物を送る際は税関手続きに注意が必要で、ストップすると非常に面倒なため、事前に送り方や送料を確認するといいです。
博士号取得者(ドクター)
ドイツでは、博士号取得者(ドクター)は、社会的地位が高く、特別な存在です。家のネームプレートに「Dr. xxx」と書かれたり、幼稚園や学校の先生の紹介欄に「Dr.xxx」と書かれたり、特別感満載です。また、日常生活のさまざまな場面でも重要視されています。例えば、駅の駐車場予約や幼稚園の申し込みサイトなどでは、ドクターかどうかを選択する欄が設けられています。信頼を得たい場合には一つの手段になります。駐車場の予約に必要なのかは分かりませんが、、、
治安
どの州でも、中央駅周辺は治安が良くありません。デュッセルドルフの中央駅周辺やメイン通りでは、麻薬中毒者や飲酒者が多く、明け方には道端に注射針が落ちていることもあります。また、アーヘンでも、一部地域では麻薬が流通しており、中央駅周辺では空き瓶が転がっていたり、朝から飲酒している人が話しかけてくることもあります。
スリ
在ドイツ日本国大使館によりますと、「身近な犯罪であるスリ、置き引き、ひったくりなどは引き続き高い水準で発生しており、人口10万人あたりの犯罪発生率は、日本の約10倍となっています。」と発表しています。
レストランで席を離れる際は、必ず所持品を持参し、バッグはしっかり閉じられるもの、特にチャック付きがいいです。スーツケースを持っている場合は特に注意が必要で、目を離した隙に取られることがあります。大都市ではスリ被害が頻繁に報告されており、中都市アーヘンでも同様の話を聞くことがあります。どの地域でもスリや置き引きに注意しながら行動するといいです。
医療
ドイツの医療は日本同様、高水準なので安心です。どこの医院も、緊急でない限り当日予約は難しいので、少し常備薬を日本から持参するといいです。
風邪をひいた時、大人はハーブティーを飲んで自宅で休むことが一般的です。薬が必要な場合は、薬局で相談すれば、症状に合った薬を処方箋なしで購入できます。小児科は、すでにかかりつけ医が決まっていれば、当日または翌日に予約が取れます。かかりつけ医を見つけるまで(初診)には時間がかかるので、渡独後すぐにかかりつけ医を見つけるといいです。
抗生物質は処方されず、風邪の場合は咳止めや鼻水止めが処方されます。インフルエンザの場合、解熱鎮痛剤(イブなど)が処方されます。
語学に不安のある方は、デュッセルドルフの医院や薬局では日本語が通じるのでおすすめです。
ホームドクター
ドイツの公的保険では、ホームドクター(かかりつけ医)制度が設けられています。近所の内科を一度受診すると、そこがホームドクターになります。ホームドクターは簡単には変更できないため、慎重に選ぶといいです。休診日に他の医院に行きたくても診てもらえなかったり、もし受診できてもそこが新たなホームドクターになる場合もあります。
人間ドック
ドイツでも人間ドックを受けることができ、内容、料金ともに日本と同じぐらいです。補助金額は加入している保険会社によって異なるため、必ず受診前に確認してください。
デュッセルドルフ近郊に住んでいる方には、ノイゲバウア馬場クリニックがおすすめです。日本人とドイツ人医師、2人とも日本語を話せるため、丁寧に検査を受けることができます。
保険
保険は日本とは全く異なり、公的保険かプライベート保険と分かれており、どちらかに必ず加入する必要があります。詳しくは下記をお読みください。
交通機関
電車、車、バスは日本同様ハイテクなので快適ですが、電車の遅延は、あり得ない!!!と叫びたくなるぐらいひどいです。簡単な概要のみこちらで確認してください。
電車
ドイツの電車は遅延が多く、予定時刻より30分以内に到着すれば「今日は意外と早く着いたな」と感じます。ドイツ人は1時間の遅れを許容範囲として考えていることが多いです。たまに時間通りに到着しますが、お子様連れの場合は遅延を想定して行動するといいです。遅延した場合、Deutsch Bahnから返金してもらえます。ただし、遅延時間が61分からで、60分までは遅延と認められないので返金されません。おかしな話です、、、返金の仕方についてはこちらをお読みください。
ホーム
同じホームでも前と後ろで到着・出発する電車が変わります。例えば、出発ホームがGleis2aの場合は、2番線のAの位置の電車になります。Dの位置で待っていると違う行先の電車になるのでお気を付け下さい。また、突然「ホームが変わりました」とアナウンスが流れる場合があります。よくわからずその場で待っていても電車は来ませんので、何かアナウンスが流れた場合は、電光掲示板を確認してください。ホームが変更されています。
運航中止
ホームで待っていると「今日は〇〇駅までの運行は中止になりました」というアナウンスが流れることがあります。運行中止になった場合、予定していた駅まで着かないのでかなりパニックになりますが、駅員さんが対応してくれます。大きな駅には「Information」があり、そこで代替え案を教えてもらえたり、駅員さんが別のルートを案内してくれます。
改札
ドイツでは改札がないため、切符を購入した後に駅員さんに見せたり回収することはありません。電車内で車掌さんが各席を回り、切符を確認します。この際、無賃乗車が発覚すると罰金を支払うことになりますので、切符は必ず購入してください。
バス
バスは電車とは異なり時間通りに来ます。たまに、予定されていたバスが欠便になることがあります。例えば、13時、13時20分、13時40分・・・に運行予定のバスがある場合、13時20分が来ず、13時40分のバスだけが到着することがあるのです。不思議ですがたまにあります。
社内には空調設備が備わっていますが、音がなるだけで夏は非常に暑いです。窓を開けた方が風が通るので涼しいですが、窓を開けることができない場合は、かなり蒸し風呂状態なので、乗る前に何か対策をするといいです。
車
軽自動車はなくミニバンも普及していませんが、家族向けの大きな車は豊富にあります。日本車も走っていますが、ドイツ車と韓国車が多いです。ドイツではマニュアル車が主流なので、オートマ車に乗っている人はほとんどいません。
通勤には、電車より車やバスが主流なので、通勤時間帯は渋滞しますが日本ほどではありません。一般道ではスピードを出す人はあまりいませんが、急ブレーキ・急発進する人は多いので、特に信号はお気を付け下さい。
ドイツで車の購入・リースを検討している方は、こちらのサイト「Auto Broker」がおすすめです。日系企業でとても親切・丁寧にサポートしてくれます。
最近は、カーシェアが普及しています。日頃は乗らず週末だけ乗りたい人にはとても便利です。
また、ドイツに渡航してから6ヶ月以内に運転免許の書き換えを行う必要があります。6ヵ月を過ぎると書き換えができなくなりますので、必ず渡独後6ヵ月以内に免許センターに行って手続きをしてください。
気候
夏の平均気温は25度前後で湿度も低く、日本の春から初夏に似た過ごしやすい気候です。夕方には涼しい風が吹き、外で過ごすのが気持ちよく感じられます。冬は都市部でも平均気温が0度前後と寒くなりますが、クリスマスマーケットやカーニバルを楽しむにはぴったりの季節です。春と秋は肌寒いため、暖房やコートが欠かせません。
地域によって気温、降水量、日照時間がかなり異なりますので、下記の外部サイトをご覧ください。
ドイツ人
ドイツ人は真面目でルールを守り、静かな生活を好みます。家族との絆が深く、夫婦や親子の関係が強いのが特徴です。頻繁に連絡を取り合い、休日は一緒に過ごしたり、定期的に帰省して家族と過ごす時間を大切にしています。働くこと以上に家族と過ごす時間を重視する文化があるので、長期休暇は家族とゆっくり過ごすのが一般的です。子どもやペットにもとても優しく、たとえばお肉屋さんでは子供にハムをサービスしたり、レストランでは犬にパンを分けてくれることもあります。ドイツ人について詳しくはこちらをお読みください。
文:レンガ
アーヘンでアパートを借りたい、小学校や幼稚園を探したい、滞在許可証申請や銀行口座開設など研究留学のサポートをして欲しい、など弊社では経験豊富なスタッフが、アーヘンへ研究留学 / 赴任する方のリロケーションサポートをしています。留学準備はぜひプロにお任せください。