アーヘンは、オランダとベルギーの国境に位置する、ドイツ最西端の街です。
その昔、フランク王国のカール大帝にとても愛された街としても有名で、カール大帝はこの地に礼拝堂を建設し、大帝も814年にここに埋葬されました。この礼拝堂が「アーヘン大聖堂」です。
UNESCOの世界遺産に初めて登録された12遺跡の1つ「アーヘン大聖堂」を中心とした中世の美しい街並みを楽しめるアーヘンは、一年中旅行客が訪れる観光地です。特にクリスマスマーケットは有名で、ドイツのクリスマスマーケットランキングで常にTOP10入りしています。
人口25万人のうち5分の1をも学生が占める大学街でもあります。ドイツ国内でもトップクラスの工科大学RWTH(アーヘン工科大学)や技術系の企業が多数所在し、世界各国からの優秀な学生やエンジニアが集まる小さいながらもインターナショナルな街です。
各地区のご紹介
気候・服装
春夏秋が短く、冬が長いです。1年のうち195日は雨が降り、終日晴れの天気予報の日でも突然降ることが多々あります。
ドイツは北海道より緯度が高くとても寒いイメージがありますが、アーヘンでは雪は年に数回しか降りません。冬の平均最低気温は0°C前後で、ドイツの中では温暖です。30°Cを超える夏日は年に1〜2週間程度で、夏服はあまり必要ありません。
一日の中で何度も天気も気温も変わるので、脱ぎ着しやすい洋服が便利です。雨がザーザー降って肌寒いと思ったら、15分後にはすっかり晴れて暖かくなっていたりしますので、「Zwiebel Look」、つまり玉ねぎのように薄手の服を重ね着すると過ごしやすいです。
ドイツの建物は断熱性が高く、室内は暖かいため、真冬でも厚手のセーターや厚手の防寒下着類は意外と出番がありません。「長袖のカットソー等」+「薄手の羽織りもの」+「季節に合ったアウター」が一年を通してのおすすめコーディネートです。ウールのコートよりはダウンコートの方が長い期間使えます。
寝具も同じで、厚手の掛布団をかけて寝ることはほとんどありません。暖房はエアコンではなく、セントラルヒーティングなので家中に温水がめぐっておりどこもかしこも温かいです。かつ乾燥しないので暖房を付けたまま寝ても喉がいたくなりません。暖房を付けて寝た場合、薄手の寝巻と薄手の布団で十分です。日本の子供達は厚手の寝巻で寝ますが、汗だくになり起きてしまいます。
街並み・街の雰囲気
アーヘンは円状に街が広がっています。街の中心に旧市街があり、そこから外に向けて住宅街が広がります。中心地には「ドイツらしさ」が感じられる風景が広がりつつ、至る所に大学の建物があり、古いヨーロッパ建築と現代的な大学施設が調和しています。東京のようなネオンが煌めく繁華街はなく、どこを歩いても落ち着きのあるヨーロッパの街並みが広がっています。
街の中心には、ユネスコ世界遺産に登録されたアーヘン大聖堂がそびえ立ち、その荘厳な姿が周囲の風景に深みを与えています。大聖堂から市庁舎へと続く石畳の坂道は、両脇に並ぶお店やレストランが賑わい、「魔女の宅急便」のような世界です。
街のあちこちにパン屋さんがありますが、特に大聖堂周辺のパン屋さんはショーウィンドウの飾りつけが魅力的で、見ているだけで心が踊ります。パンやアーヘン名物のプリンテンが美しく並べられ、その光景は散策中にふと立ち止まりたくなるほどです。
アーヘンはデュッセルドルフやベルリンといった大都市とは異なり、中規模で学生の多い街で、全体的に清潔で安全です。街の中心部は学生が多く、昼夜問わず活気にあふれており、特に夜は若者でにぎわいます。アーヘンでもっとも美しいエリアの一つとされるブルトシャイド(Burtscheid)は、家族連れが多く、子どもたちが元気に遊ぶ温かみのある地域です。ローテエアデ(Rothe Erde)周辺は、トルコ系のスーパーやレストランが並び、異国情緒あふれる活気に満ちています。高級住宅街のラオレンスベルク(Laurensberg)は、大学教授や医師が多く、街並み全体に落ち着いた雰囲気が漂っています。
お隣デュッセルドルフとは異なり、アーヘンには日本人は少なく、街中で日本人と出会うことはあまりありません。外国人の割合は高く、特にヨーロッパ出身の人々が多いです。また、ドイツは移民受け入れ国なので、移民も多く専用住居もあります。
住みやすさ
アーヘンはコンパクトな街で、バス路線が充実しているため、買い物や通勤で不便を感じることはありません。街の中心部やアーヘン中央駅前からはバスが頻繁に運行しており、市内の一番遠いエリアからでも、中心街までバスで約20分ほどです。
車を利用すれば、隣国ベルギーやオランダのスーパーやIKEAへ、15分〜30分程度でアクセス可能です。ドイツで手に入りにくい商品を見つけることができたり、ドイツは閉店法という法律があるため、日曜日はほぼ全ての商店が営業していませんが、ベルギーとオランダは開いているので買い物を楽しむことができます。なお、日用品の物価はアーヘンの方が隣国よりも安いため、日常的な買い物はドイツ国内で済ませるのがお得です。
賑やかなアーヘン中心地を少し離れると、牧場や森、ハイキングトレイルが広がり、遠出をしなくても豊かな自然を堪能できます。アーヘンは乗馬をする人が多く、街の近郊では乗馬体験ができる施設も充実しており、幼稚園児でもポニーに乗ることが可能です。
また、アーヘンから車で30分の距離には、ドイツ・オランダ・ベルギーの3国が交わる地点「3点ポイント(Dreiländerpunkt)」があります。この地点には、3国の境界を示す細長い石碑が立っており、そこを中心に1歩進むとベルギー、1歩戻るとオランダという、ユニークな体験が楽しめます。島国である日本では味わえない特別な場所です。周辺には広々とした公園や、屋内外のレストランがあり、さらにラビリンス(迷路)も設置されていて、家族で一日中楽しめるスポットです。このラビリンスは出るまでに1~2時間かかることもあるため、事前にお手洗いを済ませ、水分補給の準備も忘れずにしておくと安心です。
アーヘンは緑が豊富で、街には並木通りがあちこちに広がっています。また、広々とした公園も多く、野外コンサートが開催される公園やスライダープールのある公園など、家族連れでゆっくり楽しめる場所がたくさんあります。多くの公園にはレストランも併設されており、食事を楽しみながらのんびり過ごすことができるのも魅力です。
夏は最高の季節です!夜は22時頃まで明るく、蒸し暑さや虫も気にならず、家族で公園やテラス席でのんびり過ごせます。夕方から夜にかけては、日本では味わえない心地よさがあり、ドイツの夏ならではの魅力です。
立地
アーヘンは国内外を問わず旅行に便利な立地です。ICE(高速鉄道)が停車するアーヘン中央駅からは、ブリュッセルへ約2時間、パリへ約3時間でアクセス可能です。ケルンやデュッセルドルフへは約1時間なので、週末の小旅行にもぴったりです。また、伝統的な木組み家屋が美しいモンシャウまでは車で約40分、モーゼルワイン街道沿いの町コブレンツへは車で約2時間弱で到着します。
さらに、デュッセルドルフが近いことも大きな利点です。特に食材の買い出しや、ラーメンなど日本の味が恋しくなったときは便利です。アーヘンにも日本食レストランやアジアンショップはありますが、デュッセルドルフの日本人街は圧倒的な規模で、日本語だけで何不自由なく過ごせる環境が整っています。
医療
医療レベルは日本同様高いです。医院での予約はすぐには取れないことが多く、少なくとも2週間、長い時だと数ヶ月先まで待つ必要があります。緊急で無い限りは当日診てもらうことは難しいので、常備薬を日本から持ってきたほうが賢明です。
ドイツでは風邪をひいても、病院に行き薬をもらうことはありません。ハーブティーを飲んで家で寝て治す方法が主流です。どうしても風邪薬が欲しい場合は、薬局で薬剤師さんに相談をし症状に合うものを選んでもらい、購入することができます。処方箋がなくても実費ですが、病院で処方されるものと同様の薬を購入できます。
抗生剤はどの病院でもほぼ処方されません。風邪のときは、咳止めと鼻水止めをくれる場合もありますが、インフルエンザになったときはイブを処方されるだけです。3日経っても熱が治まらなかったら再度来てね、と言われます。再度受診しても5日経って熱が下がらなかったらまた来てね、と言われます。気が付くと治っています。
ホームドクター
ドイツの公的保険では、ホームドクター制度が設けられています。アーヘンに留学する場合は、ホームドクター(かかりつけ医)を見つけてください。
健康診断時や保険会社にホームドクターを申告することがあります。アーヘンでは、近所の内科を1度受診するとそこがホームドクターになり、今日は休診だから他の内科を受診したい、と思っても受診することはできません。もし、他のクリニックを受診した場合はそこがホームドクターになることがあります。先生から、変更する?と聞かれます。ホームドクターは簡単に変えることはできないのでお気を付けください。もしホームドクターが休診日の場合は救急外来で診てもらえます。
小児科も同様で簡単に変更することは難しいです。子供に優しい医院を探すといいです。
病院
大きな病院(アーヘン工科大学附属病院、Marienhospita、Luiesenhospital)が3つとクリニックは全部の科が揃っています。英語可の医院は多いですが、片言しか話せない先生もいるので、予約時に確認するといいです。同じ病院に英語可・不可の両方の先生がいる場合があります。もし日本語を希望の場合はデュッセルドルフの医院がおすすめです。
どこの医院も予約が非常に難しいのですが、必ず予約が必要です。そして予約しても待ちます。整形外科は特に予約が大変で3か月待ちはざらです。
保険の種類によって受診できるクリニックが変わります。
歯科
歯科は(個人的には)日本の方が腕が良いと思いますが、治療は問題ないです。日本と比較すると丁寧さに欠けます。デュッセルドルフに日本人の歯科助手さんがいる歯科があり、通訳ありで治療を受けることができます。日本語を話せる歯科医師はドイツではほとんど見たことがありません(1件ぐらい)。1番日本と違う点は、治療する歯科と抜歯をする歯科は別ということです。もし、親知らずを抜く場合は、かかりつけの歯医者さんで紹介してもらえます。
救急外来
水曜はほぼどの医院も休診で、金曜午後は休みが多いです。クリニックが休みと言っても体調が悪くなることはありますよね。その場合は救急外来で診てもらえます。ドイツ全土の番号になりますが、116に電話して、「アーヘンの今日のxx科の担当医を教えて欲しい」、と伝えれば教えてもらえます。また、UniklinikとLuiesenhospitalは救急外来があります。待ちますのでお子様が体調不良の場合は次の日まで待つかまずは考えるといいです。
路駐
駐車場は少なく、路駐が多いです。路駐は、無料・有料があり、有料の場所では必ず路駐許可チケット販売機が道路の至る所に置いてあるので、そこで購入し車中に置きます。もしくは年間路駐チケットを購入します。
警察が頻繁に路駐チェックをしているので、チケットなしで路駐しているとレッカーされます。車に乗ろう!と思ったら、・・・とマンガの世界になるので、必ず路駐チケットは購入していください。レッカーされると電話しないといけないので慌てます。車の標識や路駐方法などこちら外部サイトに詳しく書いてあります。
交通手段
車
ドイツは駅の近くに住む人があまりいないので、通勤・通学には車を利用する人が多いです。有料な場所では必ず路駐チケットを購入してください。右側通行、左側通行が日本とは異なるので初めは戸惑うかと思いますが、すぐに慣れます。初めのうちは逆走にお気を付け下さい。
免許はドイツ到着後6ヵ月以内に日本の免許から書き換える必要があります。
アーヘンには、1時間から借りられるカーシェアがあり、常時車が必要ではない人には便利です。
バス
アーヘンはバス路線が多く、電車と違い時間通りに来るのでバスはおすすめです。アーヘン中央駅前、Kaiserplatz、Eliesenbrunnen(アーヘン大聖堂前)、Normaluhr、Bushofの5か所が主なバスの乗り換え場所となっており、そこでだいたいの場所に行くことができます。同じ停留所からでも、アーヘンの円上を右回り、左回りに走っているバスがあり、どちらの回り方が早いか確認してから乗るといいです。
観光用の2階建てバスがEliesenbrunnen(アーヘン大聖堂前)から出ています。詳しくは外部サイトTripadviserをご確認下さい。
自転車
どこのエリアも坂が多いので自転車は大変なのですが、ちょっと移動したい場合にはとても便利ですよね。ただ、自転車は必ず車道を走る決まりがあり、手信号もする必要があります。大通りでも、交通量の激しい場所でも、スピードが出ている道路でも、自転車は必ず車道を走らなければいけません。ヘルメットは必需品です。もし歩道を自転車で走っていると怒られますが、幼児の場合は歩道でも大丈夫です。電動自転車はとても高額です。
買い物
スーパー、電気店、ドラッグストア、ホームセンターなどがあり日本と同じですが、ドイツはBIO(オーガニック)の国なので、BIOショップが多いです。お肉屋さんもBIOがあります。だいたい普通のスーパーで売られている商品の2倍の値段です。高いですが、良いものなのだと思います。
スーパーではお豆腐は買わない方がいいと思います。少々硬いので日本人の口には合わないかもしれません。ですが、BIOショップで売られているお豆腐は非常に美味しいです。日本のお豆腐?!と思うほど柔らかくて味が濃く美味しいです。Taifunというお豆腐で、色々なBIOショップで売られています。
アーヘンのスーパーでお醤油、味噌、お米を買うと高いです。お米は日本米は売ってなく、ほとんどがタイ米です。もし日本米が買いたい場合は、デュッセルドルフのアジアンショップ松竹がおすすめです。
お肉屋さん
日本と異なる点が2つ。一つは、子供連れで来店すると、まだ注文もしていないのに、子供に必ずハムをくれます。ドイツのハムは本当に美味しいのです!なので子供達はスーパーでお肉屋さんに行くことを楽しみにしています。そして静かに食べていてくれるのでゆっくりお肉を選べます。精肉店にはチーズ売り場もあるので、たまにハムではなくチーズをくれる人もいます。子供には嬉しい場所ですね。
二つ目は、ほとんどの精肉店では薄切り肉がありません。もし希望するなら、薄切り肉にして欲しい旨を伝えるといいですが、日本の薄切り肉にはなりません。デュッセルドルフには日本人がおおいので薄切り肉を提供している精肉店がありますが高額です。アーヘンにある精肉店:Fleischerei Lennartzではかなり良心的な値段で買うことができます。ただ1kg以上からの購入になり、電話で予約が必要です。並木通りがとてもきれいなOppenhoffalle近くにあり、中心街のAquisplazaからは徒歩で約20分のところにあります。
治安
全体的には治安が良い街です。観光客が多いアーヘン大聖堂周辺や、クリスマスマーケットなどの混雑するイベントでは特に置き引きやスリなどの窃盗犯罪が発生しやすいです。普段から手荷物は必ず肌身離さず持つようにする、レストラン等では携帯電話などの貴重品をテーブルに置いたままにしない、など日本にいる時よりは日頃から防犯意識を高く持つ必要があります。
避けたいエリア
唯一、アーヘンで警戒するエリアが、街の中心部にあるKaiserplatzです。ここでは麻薬を配っているので、使用者が道端に座っていたり、歩いています。ただ、バスの停留所があるので人通りは多く、バスの乗り換えなどで利用している人も多いので気が付かないかもしれません。知らずに遭遇すると少々驚きますね。もし住居がKaiserplatzのど真ん中の場合はお気を付け下さい。
車上荒らし
Kaiserplatz付近では車上荒らしがいます。Kaiserplatzから道路を挟んだ場所であれば住むことは問題ないのですが、駐車場がなく路駐することが増えます。夜から朝にかけて路駐すると、車上荒らしに合う可能性が高いです。できる限り、Kaiserplatz近辺での夜の路駐は避けた方がいいでしょう。
*在留届
治安とはあまり関係ありませんが、ドイツ国内でテロや緊急事態、災害が起きたとき、総領事館から連絡をもらうことができます。また、ご自身に何かあった場合も知らせる術となります。アーヘンに滞在する場合は忘れずに在留届を申請してください。
アーヘン工科大学
大学の街だけあり、街の至るところにアーヘン工科大学の校舎や施設があるので、自宅近所には何かしら大学関連の建物があります。メインキャンパスは街の中心にありますが、機械工学科や医学部があるメラーテンキャンパスは広大です。医学部が羊を多頭飼いしており、大学のキャンパスを羊が群れで歩いているところをよく見かけます。可愛いですよ。
メンザ(学食)
メラーテンにあるメンザは誰でも利用可能です。新しい建物で、窓に囲まれてとても明るくキレイです。バギーのまま入れ座席同士も広いので、昼食時は子連れのママたちもいます。学生は学生証を提示すれば割引されますが、一般の人の割引はありません。でも安いです。かつ、かなり多いです。メニューは、スパゲッティやシュニッツェル、シチュー、温野菜、生野菜、デザート、と何でもあり美味しいので、どこかのレストランに入るよりメンザがおすすめです。ちょっと街中から遠いのが残念ですね。
Super-C
ここは研究留学する学生にとってはとても重要な場所になります。滞在許可証の申請は必ずここでやります。以前は予約がなく、早朝にSuper-Cの前に並び、開始時間にドアが開いたらエレベーターへ走り、申請の整理券を奪い合うようにしていました。担当者も横柄でしたが、今はしっかりと仕組みが固まり、申請予約は大学経由でできたり、またはご自身でメールで問い合わせることができます。担当者も親切です。予約を取っていないと直接行っても申請できないのでご注意下さい。
お土産ショップ
Super-Cの隣にRWTHのお土産ショップがあります。もちろんアーヘンでしか手に入らないので貴重です。値段は手頃とは言えませんが、Tシャツで3000円ぐらいです。色々なものがあるのでSuper-Cの帰りにでも寄ってみてください。月曜は定休日です。
まとめ
アーヘンは、仕事や学業・日常生活・自然との触れ合い・観光をバランスよく楽しめる、大変暮らしやすい街です。子供と犬に親切な人が多く、子育てをするにも良い環境です。少々避けたいエリアはありますが、大都市とは違いどこも安全に暮らせます。
文:プリンテンちゃん
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