ドイツ中西部・ヘッセン州南部にある人口約16万人の中堅都市です。欧州中央銀行本部のある国際金融都市・フランクフルトから南へ約30㎞、さらに欧州最大の空港であるフランクフルト国際空港まで車で30分という地理的利便性を持っています。
ダルムシュタット工科大学、フラウンホーファー研究所、欧州宇宙運用センターなどがあり、1997年にはヘッセン州内務省がドイツ初の学術都市として認定しました。数多くの国内および国際研究機関が集まっています。
英国のEU離脱に伴い、ロンドンからフランクフルトへと拠点を移す企業や金融機関が近年増加しています。その近郊都市であり、住環境の整ったダルムシュタットも転居先として人気ではありますが、人口の増加に住宅の供給が追いついておらず、賃貸・売買ともに不動産価格は急上昇しています(2022年時点)。中都市ながら、ミュンヘン、フランクフルト、シュトゥットガルトに次ぐ、家賃の高い都市・全国第4位にランクインしたこともあります(近年の各種調査では10位以内に入ることが多いです)。
気候・服装
ブドウ栽培の盛んなライン川上流部、ライン地溝帯の中ほどに位置するダルムシュタットは年間平均気温が10.1℃と、ドイツの中では比較的温暖な地域である。1年のうち最も暑いのは平均気温19.3℃の7月、逆に最も寒いのは平均気温0.9℃の1月で、また、5~7月の春から夏の時季には比較的降雨量が多く、時折、雷や雹を伴うにわか雨が降る。夏の平均日照時間は7.5時間で、高緯度に位置するため午後9時過ぎまで空が明るい。これに対して冬は、平均日照時間が約1.5時間と、曇りがちなうす暗い日が続くことが多いが、雪は年に数えるほどしか降らず、また、10㎝以上積雪することはまれで、比較的過ごしやすいといえる。
ダルムシュタットに限らず、一般的にドイツの住宅は断熱性・気密性が高く、暖房設備が完備しているため、冬は家じゅうが快適な温度に保たれており、室内では半袖で過ごすことができる。一方、夏は近年、最高気温30℃以上の暑い日が数日続くこともめずらしくなくなりつつあるが、エアコンのある家は非常に珍しく、扇風機が頼みの綱である。しかし、日本の夏のように湿度が高くないため、日陰にいる限りはしのぎやすいといえる。
住みやすさ
ダルムシュタットには複数の大学や研究機関、ドイツテレコム、メルクなどの大手企業、また多数の情報・出版関連企業がその拠点を置いており、学生や研究者、勤労者とその家族が多く暮らしている。
また、EU域内外からの移民も近年特に増加傾向にあり、街中では日常的にドイツ語以外の言語を耳にする。小学校や幼稚園ではドイツ語を母語としない子供のため、ドイツ語および母語(主にEU諸国語が対象)によるサポートがある。住民の4分の1が外国からの移民あるいは親が外国人という国際的な住民構造を反映し、トルコ・中東系、東欧・ロシア系、東アジア系、アフリカ系など、特色のある食料品店やレストランが市内各所に多数あり、伝統的なドイツの街並みに溶け込んでいる。
市内には、ローゼンヒューエ、オランジェリー、プリンツ=ゲオルク=ガルテンなど、ヘッセン=ダルムシュタット大公ゆかりの緑豊かな美しい庭園が点在し、市民の憩いの場となっている。
市中心部は第二次世界大戦の空爆で壊滅的な被害を受け、多くの歴史的建造物が破壊された。戦後、一部を除いて再建されなかったため、中心部の商業地域は、巨大な地下駐車場を備える劇場や大型のショッピングセンターを中心に、近代的な街並みが広がっている。一方、空爆を逃れた地区には、石畳の道路の両脇に古い建築スタイルの家々が立ち並んでいる。これらの住宅は、凝った意匠の扉や外壁、居室の高い天井などはそのままに、室内を近代的にリノベーションしており、近年特に人気が高い。
また、環境保護推進を掲げる緑の党出身の市長によって、環境負荷の低い交通インフラの整備が進められ、市内を縦横に走る路面電車や乗り捨て可能なレンタル電動スクーター、自転車専用道路など、自動車以外の交通手段の拡充が図られており、渋滞が発生することはまれである。
治安
バイエルン、バーデン=ヴュルテンベルクに次ぎ、治安のよい州・全国第3位にランクインしているヘッセン州。そのヘッセンの主要な町のなかで、人口当たりの犯罪発生率がもっとも低いのがダルムシュタットである。全国ワースト1位をベルリンと常に争っているフランクフルトと比べると、その治安の良さが際立っている。
まとめ
自転車で南北に走れば、街の主要部をおよそ20分で通り抜けてしまうほどコンパクトでありながら、ダルムシュタットにはディスカウントスーパーから高級自然食品スーパー、さらには外国系まで各種スーパーが多数あり、ビアガーデンや各国料理を楽しめるレストラン、さらに大小の音楽ホールや劇場、映画館、ショッピングセンターなどの商業・娯楽施設、プール、サッカースタジアムなどのスポーツ施設、博物館、動物園、そして高い水準の医療や教育施設まで、生活に必要な施設がそう遠くない距離に集まっており、適度に国際色豊かな住民層も相まって、土地に不案内な外国人にも住みやすい街であるといえる。
市内の巨大企業によって税収と雇用は安定しており、その治安のよさ、フランクフルト国際空港まで車で30分という利便性、街中に点在する公園や周辺に広がる森で気軽に散策を楽しめる緑豊かな環境など、質の高い生活を送るための諸条件を備えた街である。